山手学院では、マサチューセッツ工科大学(MIT)の最新テクノロジーを学べるプログラム「GLOBAL TECH」の募集を実施。日本で開催されるプレコース、サマーコースを経て、2023年夏、本学より1名の学生がMIT研究所Beaver Works主催のファイナルコースに参加しました。
MITのカリキュラムをそのまま使用し、英語で自動運転について学ぶ「GLOBAL TECH」以外にも、マシンラーニングを利用した初心者向けの「Donkeycar」や、実機を使用し、日本語で自動運転車を開発する「SEASON TECH」など複数のコースを設けており、プログラミング初心者から経験者まで、多くの学生にテクノロジー学習の機会を提供しています。 GLOBAL TECHに参加した花房 堅さん(高校2年生)のインタビューを紹介します。
── GLOBAL TECHに参加したきっかけを教えてください。
小学生の頃からコンピューターを触るのが好きで、テクノロジーにはとても興味がありました。コンピューターを「使う」だけでなく、ジャンク品を購入して「分解する」「組み立てる」ということも。
最初は独学でしたが、もっと専門的な知識をつけて新しい分野に取り組むために、中学生後半からプログラミング教室に通い始めました。その中で、何か一つ、「これだ」という目標を決めて、ハードウエアを作りたいなと思い始めました。そこで興味を持ったのが「自動運転」でした。理由は単純で、難易度が高そうだったから。
ただ、自分で自動運転のプログラミングをおこない、実機を動かすという経験をできる機会になかなか巡り会えず…。そんな時に、土曜講座で配布された冊子で「GLOBAL TECH」の募集があり、親の勧めもあって参加してみることにしました。
── プログラムを通して、どんな経験ができましたか?
プログラムの前半、プレコースは、自動運転に関する知識を身につける座学がメイン。早くプログラムを書きたくてうずうずしていましたが、MITで実際に使われている教材なのですごく細かいところまで書かれており、独学では知らなかった知識を身に着けることができました。
ファイナルコースはアメリカにあるMITのキャンパスで開催されました。GLOBAL TECHの後半からは、シミュレーターを使って機械を動かすという初めての経験をしたのですが、それが本当に楽しかったです。自動運転の開発を1から作るというチャレンジは新鮮でワクワクして、実機を扱えるファイナルコースには「全部吸収して帰るぞ」という気持ちで臨みました。
ハードウエアを初めて触ったのでうまく行かないことも多かったですが、プレコースで得た知識が生きた場面がとても多かったです。自動車を自動で走行させるためのコントロール方法「PID制御」を事前に教材で見ていたので、自力で解決策に辿り着くことができ、自信がつきました。
山手学院からの参加者は僕だけでしたが、素敵な出会いもたくさんありました。
あまり英語が得意ではない僕をアメリカ人のメンバーが助けてくれて、GLOBAL TECH終了後にはニューヨークにある彼の実家に泊まらせてもらうほど仲良くなりました。
空き時間には一緒にMITのラボへ見学に行き、キャンパス内を四足歩行のロボットが歩いている様子を目にしたことも。世界各地に友人ができ、プログラミングに関する情報や知識を交換できたのも貴重な経験でした。
── サマーコース経験後は、どのような分野に関心を持っていますか?
まずは英語。もっと英語が話せたら良かったと後悔しているので、プログラム参加前よりも頑張っています。
GLOBAL TECHは、アメリカ国内では難関校に通う学生から多くの応募があり、試験やエッセイによる選考を経て、限られた人だけが参加できるものだと知り、驚きました。実際に参加者はプログラミングレベルが非常に高く、僕が参加できたことはとてもラッキーでした。参加を勧めてくれた親にも感謝しています。
もともと、プログラミングを活用できる情報系のジャンルに進みたいなという思いはありましたが、GLOBAL TECHに参加して、プログラミングにも多様なジャンルがあることを知り、選択肢が増えたので「あれもこれもやりたい」という状態になっています。これからもさまざまな経験を積んで、これから学びたいこと、将来やりたいことを見つけていきたいと思います。
このGLOBAL TECHに限らず、山手学院はたくさんのチャンスを与えてくれる環境なので、すごく恵まれているなと改めて感じています。僕自身、グローバルにそこまで高い関心を持っていたわけではありませんが、生徒全員が参加できる北米研修やオーストラリア研修を経て、より広い世界を知ることができました。興味関心があるものだけでなく、さまざまな分野を経験するという姿勢はこれからも忘れずにいたいです。
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GLOBAL TECHの募集を推進した時乗洋昭校長は、花房さんの経験談に、「こちらが期待していたものを全部吸収してきてくれた」と話します。
── GLOBAL TECHの募集には、どのような狙いがありましたか?
まさに、私が「山手学院からこんな学生を輩出したい」とイメージしていた通りの姿です。こちらが期待していたものを全部経験してきてくれたと感じています。
私自身が数学の教師でもあるので、プログラミングやテクノロジー教育にはすごく興味があり、個人的には、工夫さえすれば、プログラミングで何でも実現できると思っています。
当然、コードには正解があるけれど、決してその正解ではなくても「工夫さえすれば解決の糸口はつながる」。テクノロジー教育に限らず、学生がこうした考え方を体験できる機会を提供したい、ということは山手学院に来る前からずっと思っていたことです。
GLOBAL TECHの募集をおこなった大きな理由の一つが、MITのカリキュラムであること。テクノロジー分野の最高峰で、トップクラスの人たちが集まるイベントに参加できることは非常に貴重な機会だと思いました。
もう一つ重要だったのが、誰でも行けるわけでなく、セレクションを通過した人だけが参加できるということ。つまり、このプログラムに参加すれば世界でもハイレベルな知識や能力をもった人たちと出会うことができる。そうしたつながりができるのは、彼ら彼女らがこれから大学生、社会人になり、学びたい、キャリアを積みたい、あるいは起業したいという時に、とても心強い存在になると思うんです。
2021年に募集を開始し、初年度は参加者2名でしたが全員が途中リタイア。2年目は参加者ゼロ。3年目の今年、唯一の参加者である花房くんがファイナルコースまで修了しました。正直、山手学院からこんなに早く修了者が出るとは思っていませんでした。この後も続けていけば、どんどん裾野が広がっていくのではないでしょうか。
── 今後の展望を教えてください。
学生はそれぞれ多様な興味関心を持っており、その全てを学校のリソースだけでサポートするのは到底難しいことです。これから先、学校の大きな役割は、どれだけのネットワークを持っており、どれだけの機会を提供できるのかということだと思います。
GLOBAL TECHに関して言えば、山手学院の中で選考がおこなわれるくらい、多くの応募が集まるような規模になればうれしいですね。土曜講座の一部にプログラミング教育を取り入れているので、興味を持ち、プログラミングの”試行錯誤”を楽しめる学生が増えたらと思います。
興味のあることをどんどんやっていくと、1つの新しいものが生み出され、必ず次のステップに生かされていく。山手学院の学生には、さまざまな形で「ゼロから1を作る」という経験をしてほしいと願っています。